東京高等裁判所 昭和25年(ネ)602号 判決
控訴代理人は原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする旨の判決を求め、被控訴代理人は主文第一項同旨の判決を求めた。
事実並に証拠の関係は、
被控訴代理人に於て末尾添付の準備書面記載のとおりに、控訴代理人に於て末尾添付の第一及び第二の準備書面記載のとおりに各陳述し、控訴代理人に於て新たに乙第九ないし乙第十五号証を提出し当審証人南雲達衛、阿部清助、仲田守太郎の各証言を援用し被控訴代理人に於て乙第九ないし乙第十五号証の成立を認めた外はすべて原判決の事実に記載するとおりであるからこれを引用する。
三、理 由
当裁判所は被控訴人の本訴請求を理由があるものと認める。そしてその理由は以下に附加する外すべて原判決の理由に示すところと全く同様であるからこれを引用する。
即ち前顕甲第二号証の一ないし四、成立に争のない甲第三号証の一ないし三によれば、被控訴人は原判決の末尾添付の目録記載の家屋(本件家屋と呼ぶ)が被控訴人の所有に属するものとしてその名義で昭和二十二年二月十二日所轄の村上税務署長に対し財産税課税価格の申告をなし以下いずれも被控訴人の名義で同月二十八日財産税額の通知を受け同年三月十五日これを納入した外同年十二月九日追徴税額の通知を受け翌年二月六日これを納入した事実が認められる。他方成立に争のない甲第四号証の一、二によれば昭和二十三年六月二十二日本件家屋の家屋税並に附加税が行蔵名義で納入せられた事実、成立に争のない乙第九号証によれば昭和十三年度の村税徴税令書が文二宛に発せられた事実、成立に争のない乙第十ないし乙第十五号証によれば、昭和二十年度の家屋税、昭和二十一年度の家屋税、附加税、昭和二十四年度の家屋税、附加税等がいずれも行蔵名義で賦課せられた事実を認めることが出来るが、前顕乙第一号証、第二号証の一、二原審証人佐藤ハナ、重野茂雄、原審に於ける被控訴本人の各供述を綜合すれば、被控訴人は次男で行蔵の家督相続人ではなかつた為め行蔵生前中新潟県立村上中学校を卒業後一旦は工業関係の上級学校への進学を志したが父行蔵兄文二の勧告に従い父行蔵亡き後は兄文二に代つて家業たる旅人宿業を継承することを決意し行蔵生前中はその営業を手伝つて来た事実、行蔵死亡の際兄文二を始め親戚一同の諒解の下に行蔵の家業を継承する事実上の家督相続人として葬儀万端を主宰した事実、兄文二は行蔵の葬儀の際とその翌月跡始未整理の際(昭和十一年六月)保内村へ帰村した以外帰村したことはなく、被控訴人は行蔵死亡後は生前の父行蔵兄文二の前記諒解に基き行蔵の旅人宿業を継承し本件家屋は元より保内村の行蔵の遺産全部を主宰し来つたものであり、兄文二もこれを承認し、本件家屋については、原審認定の如く昭和十一年六月五日被控訴人は兄文二から贈与を受けたが保存登記もない儘に所有権移転の登記も行はれず長く放置してあつたが、文二が昭和二十四年四月二十六日大光無尽株式会社から金借する為め本件家屋を担保に供する必要を生じ、ここに被控訴人の承諾の下に本件家屋に抵当権を設定することゝなり、既往の事実に合致するよう本件保存登記並に移転登記がなされるに至つたもので、毫も財産税賦課を免れん等の意図の下に登記原因を遡及仮装してなされたものではない事実、前掲文二或は行蔵名義に賦課せられた税金はいずれもその名義の如何を問はず被控訴人が実質上負担すべきものと信じて自ら納入して来た事実を夫々認めることができるから前記文二又は行蔵に対して課税せられ同人等名義で納税せられた事実は毫も被控訴人が本件家屋を昭和十一年六月五日文二から贈与を受けた事実を認定するの防げとはならない。又成立に争のない乙第七号証は原審に於ける被控訴人の供述によれば被控訴人又は文二に於てその記載のような届出をしなかつたことが認められるからその記載内容は採用し難く、その他控訴人が当審に於て提出する資料によるも到底右認定を覆して控訴人の主張事実を肯認することは出来ない。
控訴人は若し被控訴人が昭和十一年六月五日本件家屋の所有権を取得していたとすれば当時施行の新潟県税賦課規則施行細目により右不動産取得の届出をしていなければならず、同法により賦課せられていた雑種税を納入していなければならなかつたのにこの事実がない以上右事実は存在しなかつたものであると主張するが、仮に控訴人の主張のとおりとするも法の要求する届出が励行されることは元より望ましいことではあるが巷間往々届出が怠られる事例はない理ではないからこの一事によつては未だ前記認定を抹殺することは許されないと考へる。
よつて原判決を相当とし本件控訴を理由がないものと認め民事訴訟法第三百八十四条第一項、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 渡辺葆 浜田潔夫 牛山要)